ウェッジの溝とスピン
プロが試合などで、グリーン周りからのアプローチでスピンをきかせたボールを目にする事ってよくあると思います。
トン、トン、キュッ!
というやつです。
あれ、カッコ良いですよね。
ああいったスピンのきいたボールってどうやって打っているんでしょう?
スピンをかけるコツ?
プロの技術ももちろんありますが・・・
『ウレタンカバーを採用したスピン系ボール』を『軟鉄等の軟らかい素材のウェッジ』の『芯』で打つ。
これだけで実はある程度のスピンはかかり、ボールは止まります。
逆に言うと、
ディスタンス系で採用されている事の多い『高反発アイオノマー系カバーのボール』を、
『チタンやマレージング素材のフェース』のウェッジで打った場合、
芯でヒットしてもスピンはかかりにくいと言えます。
これらは一体何が違うのでしょうか。
一言でいえば摩擦です。
そして摩擦力を上げるにはボール(この場合カバーの柔らかさを指します)もウェッジも柔らかい方が有利です。
ボールを打ってフェースに乗る瞬間。
この一瞬が長ければ長いほど摩擦が加わりスピンがかかると言う訳です。
つまり反発力の高いボールを、同じく反発力の高いクラブで打っても、
球離れが速いため摩擦は起こりにくく、スピンもかかりにくくなるという訳です。
ちなみに摩擦アップする事に関しては、『フェースの溝を無くす』というのが一番アップします。
・・・え?逆でしょ?
と、思う方もいらっしゃるかと思います。
溝を無くしたらスピンがかかる訳ないと思うかもしれません。
しかしボールとフェースに大きな摩擦をかけようと思ったら、
フェースは溝も何もない真っ平である方が良いんです。
ただし!
芝1本、水1滴でもボールとフェースの間に挟まろうものならスピンは一気に激減します。
ですが芝1本挟まずに打つ事はプロといえど難しいですし、
フェアウェイならともかくラフやバンカーに入ったらお手上げです。
つまり溝とはボールとフェースの間に挟まった芝・土・水滴等を除去する為に存在するという所がホントの所なのです。
『角溝』ウェッジの正体と効果
ところで、今はルールで規制されてしまい生産されなくなりましたが、
『角溝』と言われた溝を採用したウェッジが存在しました。
溝の入り口部分が角ばっていた事から角溝と呼ばれていました。
角ばって(尖って)いますので、ボールの表面がすぐにささくれて表面がいびつになったものです。
では、なぜそんな尖っている角溝を使用するとボールがとまりやすくなるのでしょうか。
単純に言うと、ボールとフェースの間に挟まった芝をその尖りで切っているからです。
切る事によりボールとフェースに挟まる異物を減らし、『くっついている時間』を長くしてる訳です。
長くなれば摩擦によりスピンがかかります。
これが角溝の効果です。
アマチュアは、ボールだけをクリーンに打つ事はフェアウェイからといえどなかなか出来ません。
角溝であれば多少ダフッたり芝を噛んでも、
それらを除去してくれるので摩擦が増え止まるのです。
ですのでプロにとって角溝は、フェアウェイからというよりはラフから止まりやすいというメリットが大きかったと言えます。
今田プロにもたらした溝のルール変更
溝ルールが規制されて以降、大抵のプレイヤーがそれに順応して来ましたが、
今田竜二プロは、
『溝が変わってからイメージ通り打てない事が多くなった。』
というコメントをしていた事がありました。
スピンがかかる・かからないという事がアマチュアにとっては非常に意味がありましたが、
プロにとってはより繊細な部分での違和感が生じて、成績不振につながる事もあるのかもしれません。
特に自他共に認めるウエッジプレイヤーの今田プロにとっては、このルール変更によるクラブの変化が大きなものだった事は想像に難くありません。
アマチュアにとっての溝とは
ところで角溝に限りませんが、溝は使用する内に擦り減っていきます。
特に角溝は尖りが消え丸くなってくると芝を切らなくなりますので、
使用当初の頃より止まりが悪くなります。
そういう意味では最近のウェッジは溝の入り口がなだらかになりましたので、溝の寿命が長くなりました。
しかしプロは別です。
彼らはラウンド数・練習量ともにアマチュアの数倍・数十倍ですから、
中にはウェッジは消耗品と割り切って、1か月に1本のペースで取り換えるプロもいる程です。
我々アマチュアは溝が多少擦り減ったとしても、
慣れ親しんだウェッジを愛用した方がスコアメイクに繋がる可能性もあるので、
溝に対してそこまで神経質にならなくても良いかと思います。
ウェッジの溝とスピンというお題でお話しして来ましたが、
それよりも擦り減りやすいグリップを小まめに交換する方が
スコアアップにはつながるでしょう。(笑)